阪神タイガース が優勝した2023年9月14日木曜日。
私は甲子園球場のライトスタンドにいました。
阪神が才木浩人投手、そして巨人は赤星優志投手の投げ合いで試合はスタート。
両チームなかなか点が入らない展開で、タイガースは4回裏に無死満塁のチャンを作るも佐藤輝明選手がフルカウントから空振り三振。
そしてシェルドン・ノイジー選手の投ゴロ併殺打で無得点に終わるなど「ホンマに阪神は、今日、優勝するんか?」「今まで、何度も裏切られたさかいになぁ」と周りの人々の声も「阪神半疑」な空気感が漂い始めた。
阪神タイガース 大山悠輔選手の滞空時間の長い中犠飛で先制
6回裏タイガースの攻撃。
早く先制点が欲しい・・・
なんだか、「このまま巨人に先制されたら負けてしまうんちゃうか?」という展開だ。
しかし、ついに均衡が破れる。
1アウト1.3塁から4番の大山選手が放った打球は高く上がった大きなセンターフライだった。
飛距離は十分。
巨人センターの丸選手が落下点に入るものの、なかなか打球が落ちてこない。
三塁ランナーのホームインは確実だ。
漆黒の夜空に大山選手が放った白い打球が舞い上がる。
「これでいよいよ阪神は優勝するのか・・・」
私の中で確信めいたものが、ようやく心に芽生え始めた。
阪神タイガース 暗黒時代
時は遡り1989年のゴールデンウィーク。
阪神は低迷していた。
しかし中村勝広 監督 率いる虎は5月の上旬まで善戦していた。
ヤクルトスワローズとのデイゲームだったか。
雨の中での試合になり、カクテル光線には光が灯っていたと記憶する。
五月の連休中、虎は連勝を重ねていた。
その中で台頭著しい右の長距離砲である八木裕選手が曇り空を引き裂いてレフトラッキーゾーンへ本塁打を放った。
タイガースには右の大砲がなかなか育たなかった時代だ。
現監督の岡田彰布氏に続くスラッガーがいなかった。
そんな中、出てきたのが八木選手だった。
確かヤクルトとの3連戦をスウィープし、5連勝と好調なチーム状態だったのだが、シーズン終盤には失速していた。
その年の夏場。同じように漆黒の夜空にヤクルトの池山選手、広沢選手らが高くセンターに舞い上がる打球を放ち、甲子園のバックスクリーンへ放り込んでいった。
そして、タイガースの選手の打球は・・・
ことごとくフェンスの手前で失速していったのである。
30数年の時を経て
そして2023年、大山選手のセンターへの打球も決してフェンスを越えるような打球ではなかった。
しかし、犠牲フライには十分だ。
タイガースの4番打者として本塁打数は14日時点で14本。
決して多い数字ではない。
しかし、「あと1点」がなかなか取れなく、そして「あと1点」で泣いてきたチームにとっては大きな先制点だ。
何故だか、今まで相手に打たれてきたセンターへの打球が走馬灯のように思い浮かび、1992年・2008年・2010年・2021年のV逸が頭をよぎる。
僅か数秒の飛球だったが私には物凄く長い時間に感じた。
Respectは誰に対してのものだったのか
今年7月18日、脳腫瘍のため28歳の若さでこの世を去った元タイガースの選手がいる。
横田慎太郎さんだ。2017年の春季キャンプ中に脳腫瘍が判明。
抗がん剤治療などを受けて回復を目指したが、低下した視力が戻らず、19年に引退していた。
2023年の阪神タイガースのスローガンはA.R.E アレ。
個人・チームとして明確な目標(Aim!)に向かって、野球というスポーツや諸先輩方に対して敬いの気持ち(Respect)を持って取り組み、個々がさらにパワーアップ(Empower!)することで最高の結果を残していく という意味が込められている。
このR部分のRespectだが、一般的な解釈だと自分より年長者への敬いの意味での「尊敬」を意味する。
しかし、このRespectには他にも意味がる。
「尊重」「重視」そして「注意関心」だ。
もちろん「尊敬」は年下の人に対する尊敬もあるだろうし、「尊敬される人」に年齢が上も下も関係ない。
スローガン内でタイガースは「R」を「先輩方への敬い」の意味でRespectを使用した。
もちろん、阪神ナインは当初、そのように言葉を解釈していたのだろうが、横田慎太郎さんの死を境に、その解釈が激変したのには間違いない。
18年ぶりのリーグ制覇へ分岐点となったゲームがある。7月25日、甲子園で行われた巨人戦。この試合は脳腫瘍のため28歳の若さで急逝した横田慎太郎さんの追悼試合だった。岡田監督が「特別なゲーム」と称した一戦。6連戦の初戦にもかかわらず、試合前に自ら課したルールを破る決断をしていた。
デイリー
阪神 18年ぶりVへの分岐点だった横田慎太郎さん追悼試合 岡田監督「特別なゲーム」一体感を生み快進撃へ
7月25日の追悼試合を機に明らかにタイガースナインの心の中に横田慎太郎さんへの「尊重」「重視」そして「注意関心」つまりRespectが芽生えた。
本当の意味でのキャッチスローガンが動き出したのだ。
毎年失速する長期ロードの8月は10連勝を含む18勝7敗。
そして岡田監督が勝負どころと位置付けた9月は、負けなしの11連勝でV決定。
追悼試合から優勝を決めた14日・巨人戦までの成績33勝8敗1引き分けという驚異的な勝率をたたき出したのは、A.R.EのRespectが強烈に、そして確実に選手たちの中にあったのだ。
栄光の架橋
2023年9月14日、6回裏に佐藤輝明選手の2点本塁打が出て阪神3-0巨人になった。
スタンドは狂喜乱舞だった。
しかし、ブルペンで待機していたであろう岩崎優投手は静かにその時を待っていたに違いない。
阪神 4-2 巨人で迎えた9回表、いよいよ今季1年間、湯浅投手の離脱を埋めてきた守護神が登場する。
そして、その時だった。
岩崎投手のいつもの登場曲とは違うメロディーが流れる。
ゆずの「栄光への架橋」だった。
最初は球団というかチーム全体としての演出なのかと思った。
18年ぶりのリーグ優勝へ向けて、最後の「栄光」への「架け橋」という意味かと少し思った。
それが生前に横田慎太郎選手が使用していた登場曲だったと思い出すのに、そんなに多くの時間は要らなかった。
スタンドではファンが「栄光への架橋」を大合唱している。
私は優勝への緊張と、横田選手へのファンとナインの思いが一つになった空間に痺れが来て、マウンド上で投球練習をしている岩崎投手の様子を直視することができずに俯いていた。
さあ、あと3つのアウトを取ればリーグ優勝。
だが巨人もそう簡単には終わらせてくれない。
坂本選手の本塁打で1点差に迫ると、さらにランナーを3塁へ進める。
2アウトながらも同点の走者が3塁にいる非常に緊迫した場面だ。
しかし、甲子園球場には何か大きな力が動いているように感じた。
とても大きな力だ。
これは、最初、スタンドを埋め尽くすファンが作り出す雰囲気のことかと思った。
しかし、違う。
何かが違った。
なんとなくだが、上空から大きなパワーが球場全体を覆っている。
そんな感覚だった。
最後の打者の打球がセカンドへ高く舞い上がる。
大山選手の中犠飛の時と同じで、なかなか打球が落ちてこない。
「ああ、これでホンマに決まってまうんや」
嬉しいのか、悲しいのか、もうちょっと余韻を楽しみたいのか、緊張しているのか、なんだかよく分からない状態で中野拓夢選手がウイニングボールを掴んだ。
あの時 甲子園には横田慎太郎さんが確実にいました。
優勝が決まった瞬間、スタンドではマウンド同様、もみくちゃになった。
ハイタッチに抱擁、万歳している人、絶叫している人、泣いている人に号泣している人と、実に様々な感情が交錯していたのだが、意外にも私は笑顔で喜んでいた。
不思議と涙はなかった。
岡田監督の胴上げが行われ、梅野選手が横田慎太郎さんのユニフォームを持ってマウンドに駆け寄ったという事を、私は後で知ることになる。
ライトスタンドで見ていた私は、マウンド上で行われている選手たちの細かい動きや表情は見えなかった。
岩崎投手が最後にかけた登場曲の「栄光の架橋」とマウンドでの横田さんのユニフォーム。
そして、あの甲子園の上空からとてつもなく感じる得体のしれないパワー。
現場で感じたのは、確実にあの日、あの瞬間、横田慎太郎さんは甲子園球場のどこかは分からないが、存在していたという事だ。
スローガンのA.R.EのR「Respect」
阪神ナインは野球がしたくてもできなくなった横田さんの事を思い、横田さんの意志だった「優勝したい」「もっと野球がしたかった」という気持ちを「尊重」し「敬った」のだ。
その結果、タイガースは最高の形を残した。
チームにベテラン選手が不在の中、岡田監督の経験が若手の経験値不足を補う形になるかと思いきや、選手らは横田さんの追悼試合をキッカケに怒涛の勝利街道を突き進んだ。
2023年 セリーグ優勝おめでとうございます。
しかし、まだこの先に取りに行かなければいけない、38年ぶりの大きな忘れ物があるのです。
阪神ナインと天国の横田慎太郎さん、「リーグ優勝」は通過点、ですよね。
「45歳からのYouTuber」45dream Powered by kokeisansyo_tv
” がんちゃん “ 大阪府出身
上場企業管理職➡43歳からYouTuber
PC / 撮影 スキル 知識ゼロから3年半で登録者数 7,700名を達成!。
2022年に株式会社 虎渓三笑TVを設立。代表取締役兼CEO
サラリーマン+現役YouTuber+経営者の三足の草鞋を履く
- 動画編集
- SNSマーケ / Webマーケ
- BLOG・ECサイトと幅広く業務を展開。
某CS放送にてCM出演の経歴あり。
スポーツ紙にECサイトの広告掲載をするなど、 メディア活用に強み。
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